過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群は、腸に器質的な異常がないにもかかわらず、慢性的な腹痛や腹部不快感を伴う便通異常(下痢、便秘、またはその両方)を繰り返す疾患です。日本人の数十%が罹患しているとされています。
生命に直接的に関わる疾患ではありませんが、通勤や通学、会議など緊張する場面で症状が悪化しやすく、トイレの心配から外出を控えるなど、日常生活や社会生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。QOL(生活の質)を維持するためにも、適切な治療による症状のコントロールが重要です。
過敏性腸症候群の原因
過敏性腸症候群の発症には、ストレスとの関連が示唆されています。精神的ストレスや不安、緊張により脳と腸を結ぶ神経系のバランスが崩れ、腸の運動異常や知覚過敏が生じます。
腸内細菌叢の乱れも発症に関与し、感染性腸炎後に発症することもあります。食事の要因としては、脂肪分の多い食事、香辛料、アルコール、カフェインなどが症状を悪化させることがあります。また、遺伝的素因や性格的な傾向も関連すると考えられています。
過敏性腸症候群の症状
チェックリスト
過敏性腸症候群では、以下のような症状が数ヶ月以上続く場合に疑われます。
- 下痢と便秘を繰り返している
- 排便により腹痛や腹部不快感が改善する
- 排便回数が不規則
- 腹部膨満感、ガスが溜まる感じがある
- ストレスや緊張で症状が悪化する
下痢型
強い便意と下痢が特徴で、1日3回以上の軟便や水様便を認めます。朝の通勤や通学時に症状が出やすく、トイレの不安から電車に乗れないこともあります。食後すぐに便意を催すことも多く、外食を避ける傾向があります。
便秘型
硬い便、排便困難、残便感が主な症状で、腹部膨満感が強くガスが溜まりやすい特徴があります。
混合型
下痢と便秘を交互に繰り返すタイプで、予測がつかない便通の異常が特徴的です。ストレスの程度により症状が変動しやすく、管理が困難な場合もあります。
過敏性腸症候群の検査
過敏性腸症候群は除外診断が基本となるため、他の疾患の可能性を除外することが重要です。
問診により、症状の詳細や発症時期、ストレス要因や食事との関連などを確認します。血液検査では、炎症反応や貧血などを評価します。便検査では、感染性腸炎や寄生虫、血便の有無を確認します。大腸内視鏡検査では、大腸がんや炎症性腸疾患の有無を確認し、それらの疾患との判別につなげます。
過敏性腸症候群の治し方
~気にしすぎない生活を~
過敏性腸症候群の治療は、症状をコントロールして日常生活への影響を最小限にすることが目標です。「症状と上手く付き合う」という姿勢を心がけましょう。
食事などの生活習慣の改善
規則正しい食生活を心がけ、暴飲暴食を避けましょう。脂肪分の多い食事、香辛料、アルコール、カフェインを控えめにすることも大切です。
適度な運動はストレス解消と腸管運動の正常化に有効です。他にも、十分な睡眠やリラクゼーション法(深呼吸、ヨガ、瞑想)の実践も推奨されます。症状日記をつけることで、誘因を特定し対処法を見つけやすくなります。
薬物療法
症状のタイプに応じて薬剤を選択します。下痢型には、5-HT3受容体拮抗薬や止痢薬を使用します。便秘型には、粘膜上皮機能変容薬や緩下剤を用います。
プロバイオティクスは腸内環境改善に有効で、すべての型に使用する場合があります。また、精神的な症状を安定させるために、抗不安薬や抗うつ薬を使用する場合もあります。

